2014年7月11日金曜日

中高一貫教育について思うこと

福井では来年度から高志中学がはじまり中高一貫教育の公立学校が出来ます。果たしてどのようなものになるのでしょうか。これについてはそろそろ具体的な情報が上がってきたので確認中ですが、この機会に中高一貫教育について思うことを少し。

以前、中高一貫教育の学校に通っている生徒さんを受け持っていたことがあります。学校の授業の進め方がどうなのかなど分からないこともあったので常に進捗を確認しながらやっていました。あくまで生徒さんから聞く情報が主ですので多少違って伝わっていることもあるかと思いますが、私は学校にあまり良い印象を持ちませんでした。

というのも折角の中高一貫教育がただの大学受験対策になっていると感じたからです。
私が聞く限りカリキュラムにたいした工夫もなく早く進めることを主眼においているようでした。高校受験を気にしなくて良いので早めに中学過程を終わらせて中学のうちに高校過程を始める。そしてそれも早く終わらせて丸々大学受験の対策に専念できる時間をつくる、そんな感じのようでした。

一つの考え方としてこれも正しいのかもしれませんが、私にはつまらなく見えてしまいます。

どうせ中高一貫にするのであればもっとカリキュラムに工夫がほしいです。
私が中学生に勉強を教えるときに困ることの一つが中学の枠に縛られてしまうことです。高校生だったらもっと良いやり方が出来るのに、などと思っても中学の枠の中で教えなければいけないことは多々あります。

例えば、数学です。入試などでよく出題される「規則性」というものは多くの生徒さんが苦労します。ですがこれって高校の「数列」を知っていると比較的簡単に解ける問題が多くあります。でも中学でそれは学ばないので便利な方法が使えないから苦労してしまうのです。

もっと切実に中学の枠に縛られることが苦しいのが理科です。正確な理屈を教えずに話が進むことはよくあります。また理屈が中学生用に作られていて本来の科学と異なるということも。

例えば「物質の状態変化」では「液体から固体に変わると体積は小さくなる」と教えるのですが困ったことに一番身近ともいえる物質の水がこの通りではありません。これは身近な水が実はちょっと特殊だという困った理由からそうなるのですが、その理屈が説明されるのは高校に入ってからです。中学生に説明するのは難しい内容であるともいえますが、感覚的に合わないことをただ覚えるのは面白くありません。というより科学の楽しさが全く損なわれています。

他にも「中和」というものがあります。非常に残念なのはこの定義が中学と高校で違うということです。たしかに中学生用に分かりやすくすることに意味はあるかもしれませんが、高校に入って「あれは違ってます。本当は…」と教えられるわけで私の場合はよけいに混乱してしまいました。

つまり何が言いたいのかというと中高一貫教育をするのであれば中学と高校の学習内容を根本的に融合させた新しいカリキュラムを作ってほしいということです。

私がよく知らないだけでそういう事をしてくれている学校もあるのかもしれません。そうであれば良いのですが、あたかも大学に入ることだけが目的かの様に受験勉強だけしていては貴重な十代が勿体無いです。本当のゴールはもっともっと先です。そしてゴールだけが大切でなくその過程にも意味があります。その時々で有意義な学習が出来ることを願います。

理想論ですかね?
でもテストのためだけでない、学ぶ楽しさを伝えたいというのが指導者としての私の根底にある大切な部分なので捨ててはいけないと思うわけです。(取り敢えず上手くできているかは置いておくとして…)