2015年11月18日水曜日

「ロケットスタート」に思うこと

「ロケットスタート」という表現はご存知でしょうか。多くの人が耳にしたことはあると思います。
私もテレビなどで時々聞きますがいつも違和感を感じてしまいます。正確に意味を調べたことはありませんが、使われる場面を見ていると出だしの早いことを表現しているようです。なんとなく気持ちは伝わるのですが、使っている人は本当のロケットのスタートを知っているのかと疑問に思ってしまいます。

はっきり言ってロケットのスタートは遅いのです。そして遅くなければいけないのです。
そもそもロケットは人や物を運ぶ輸送機です。ですから中の物をきちんと目的の場所に届けることが一番の使命なのです。
例えば衛星軌道に物を運ぶためには最終的に秒速8km弱の速さが必要です。これはかなり早いです。もし一瞬でこの速さに加速できるとしたら、そのGはとてつもなく中の人は死んでしまうでしょうし、物でも壊れる可能性は高くなります。それよりも根本的にあの巨体を一瞬でこの速さまで持っていくのは少し無理がありそうです。

大昔の名作に「月世界旅行」というジュール・ヴェルヌの作品があります。まだ空を飛ぶことさえままならなかった時代に書かれたSFです。この中では月まで行く手段として砲弾が使われています。大きな大砲で人を乗せた弾を打ち出します。砲弾にはエンジンなどついていない訳ですから打ち出した瞬間の力だけで第二宇宙速度(秒速11km強)まで達する必要があります。恐らく人は死んでしまうのではないでしょうか。この作品が時代的なものを含めて名作であることに変わりはありませんが、現在の常識では無理があります。

砲弾と違いロケットは燃料を燃やしながら進みます。つまり徐々に速度が上がるということです。

つまり出だしが早いことを形容するなら「弾丸スタート」の方があっているといえるのです。

でもまあ、雰囲気は伝わるようなので本当は細かいこと気にしなくても良いのですけれどね。
ただロケット好きとしてはちょっと言っておきたかったというだけの話でした。