2013年7月11日木曜日

正しい塾の選び方 料金編(塾側の視点)

今回は視点を少し変えて、塾側がどのようなことを考えているのか見てみましょう。それを知ることで授業料の本質が見えてくるかも知れません。

まず塾は営利団体ですので利益を出そうとします。それ自体は当然のことで何も悪いことではありません。問題は「利益」が「お子様のために」という塾が本来最も考えなければならない事柄より優先されてしまうことがあるということです。

塾が利益を上げるための基本構造は「人件費を少なく、授業料を多く」これにつきます。
もちろん経費を抑える等の事柄もありますがそれは企業経営にとっては当たり前のことであり特筆すべき内容はありません。要は商品(授業)でいかに利益が上げられるかが問題なのです。

塾にとって最も効率がよいのは講師1人が大勢の生徒さんを指導する方法です。一斉授業などがそれにあたります。
アルバイトの講師を使う場合は単価が決まっていますので、数人生徒さんがいれば人件費はだいたいまかなえます。それより増えた生徒さんは全て塾の利益です。一斉授業の場合、生徒数が増えても手間はほとんど変わりませんので塾としては席がある限り埋めたいと考えています。
別に悪いことではありません。ただ一斉授業はみんな学校で受けていますので、塾の授業にはそれ以上のものがなければなりません。学校の繰り返しのような内容では価値がないと言ってもいいでしょう。もし一斉授業を希望されるのであれば有名講師がいる予備校のような特別な授業をしてくれるところを探しましょう。そうでないと、利益集めの人数確保に使われるだけになってしまいます。

ですが結局のところ塾としては少ない講師で大勢のお子様を指導したいというのが本音なのです。
しかし最近は学校とは違うものを塾に求める意識が高くなっているで、個別スタイルの塾が増えてきました。個別スタイルについては「学習スタイル編」で詳しく書きましたのでご覧になっていただきたいと思いますが、ここに塾側の悩みが生じたのです。

「人件費を少なく、授業料を多く」の考え方からいくと1人の講師が大勢のお子様を指導できない個別スタイルでは1人の生徒さんから取る授業料を上げるしかありません。
それをそのままやっているのが家庭教師です。一斉授業が生徒数で利益を上げる部分を1人の生徒さんから取ることで成り立っていますので、その授業料は高額になりがちです。仕方のないことなのです。(まあ、全ての家庭教師の料金が適正価格かと言われれば疑問は残りますが)

本来であれば高額な授業料は敬遠されますが、不思議と「塾」と「家庭教師」には微妙な線引きがあり相場もそれぞれで成り立っています。そのため高額でも「家庭教師なら仕方ない」と思われて対立することなく別物として共存しているといえます。
不思議ですね、教室を用意しなくていい分だけ経費が掛からないと思うのですが高額で許されるのですから。

苦しいのは個別スタイルの塾です。こちらは塾としての相場が適用されてしまいます。個別スタイルなので一斉授業よりは高い料金設定に出来ますが、家庭教師ほどにしてしまうと誰も来てくれません。
そこで考え出されたと思われるのが1対複数の個別スタイルです。
1人分の授業料を少し高くして生徒数も1人ではなくすることで「人件費を少なく、授業料を多く」を何とか実現したのです。
色々工夫しているんですね。
ですがまだ安心できません。「個別」といいながら1対複数であることに理由が必要です。本当のことでも「利益確保のため」とは言えないものです。
そこで使われるのが「お子様が自分で考える時間も必要です」というセリフ。

決して嘘ではありません。
一方的に講師が教えるのではなくその内容を自分で確かめる時間は必要です。
ですが本来その「自分で考える時間」というのは「自習時間」と同義ではないということを忘れないでほしいと考えます。
一度聞いただけで全て出来てしまうお子様はまずいません。実際に自分でやってみてつまずいて、それを解消していくことで少しずつ身に付いていくのです。ですから「自分で考える時間」こそ講師は目を光らせていなければいけないのです。
つまずいたタイミングで的確なヒントを出す、考えているときには待つことも必要ですが場合によっては答えを教えてしまい次の類題を指示することも大切です。これが単なる自習時間になってしまうとつまずいても放置状態で、何も出来ず時間だけが浪費されます。
自分で的確に調べながら進められるお子様であればこんな問題は生じないかもしれませんが、自分に合わせて少し上を目指して学習する以上は自分だけでは解消できない問題が必ず出てきます。そのときこそ講師の助けが必要なのです。もしそれが必要ないのであればはじめから塾に行く必要などありません。

1対複数の個別スタイルが悪いといっているわけではありません。ですが塾や講師がよっぽど工夫しているところでない限り半分以上の時間は単なる自習になってしまうことを念頭においていただきたいと思います。
半分以上は自習だということを分かった上で選ばれるのであれば、その分の価値はあると思います。

ちなみに1対2の授業であれば単純に考えて1対1の授業の半分しか指導時間はありません。
指導時間だけで考えると「1対2の授業料2ヵ月分」=「1対1の授業料1か月分」ということになります。
1対複数のほうが授業料は安く見えますが、それが本当に安いのかは自身で判断することが大切です。

このような感じに塾側の考えをまとめてみました。
繰り返しになりますが塾は営利団体ですので利益を出さなくてはなりません。そのために工夫をするのは当然です。
利益をあげている塾が悪いわけでは決してありません。生徒さんだけが喜ぶ塾では潰れてしまいます。
利益を追求することが悪いのではなく、そのやり方が適正なのかを判断してください。

塾の説明を聞く際にはそれが「利益だけのため」なのか「利益とお子様のため」なのか考えながら聞くことをお勧めします。